11月〜12月



11 12
「酒と薔薇の日々」
「薔薇園にて」
「冬の準備いろいろ」
「冬の訪れ」
「冬咲きたんぽぽ」
「剪定は1日にしてならず」







2000.12.27 (西高東低の冬型の気圧配置 東京は冬晴れ)
「剪定は1日にしてならず」

つる薔薇、シュラブローズの剪定&誘引が終わった。クリスマスイブからずっと作業を続けてきたのがようやく今日。

剪定に入る前にまず施したのは寒肥。有機質の肥料(骨粉5kg・油粕5kg・草木灰2.5kg)に炭の粉、クンタンを混ぜて。たくさんの苗の根っこや夥しい球根の芽を傷つけないように注意深く薔薇の株もとに移植ゴテで穴を掘り、そこに肥料を埋めていく。最後にたっぷりの牛糞でマルチング。12月の始めに施した生ごみ堆肥はもうすっかりぽろぽろになり臭いもない。

剪定は、まずぼうぼうに茂ったコーネリアの茂みから。ばっさりと、必要な枝のみを残して枝を落す。狭いスペースで育てるには思いきりが肝心。その後、誘引しやすい太さの枝を使って、まんべんなくトレリスにそって花が咲くよう誘引する。そして切った枝の始末。ここまでで1日が終わる。
翌日は、トレリスにそって植えてあるヘリテイジの剪定。3分の1程度を切り戻す。ジェーンオースチンも同じ位切り戻すが、とりわけ長く伸びたシュートは、横に引っ張ってつる薔薇のように誘引しておいた。伸びが毎年良くないエブリンは、貴重なシュートを斜めに倒して誘引する。薔薇の根元に植えた八重咲きのクレマチスモンタナを薔薇の枝を縫うように誘引する。これは開花がとても楽しみな作業。ここで夕暮れを迎える。冷えこむ中での枝の始末。
お次は、コンプリカータ。ばしばし3分の1程度を切り戻す。少し早めに帰って来れた日の夕暮れどきの作業。夕日が目に入ってとても眩しい。
いよいよ、休暇に入る。マダムイザークペレールをオベリスクに巻きつける。たくさんの枝を交差させたりひっぱったりして、オベリスクの下まで花が付くようにと知恵を絞る。まるでパズルだ。半日過ぎてもまだ完了せず、翌日に持ち越し。
そして最終日の今日、オベリスクを仕上げ、南側のつる薔薇たちをかたずける。これはまったくの大仕事。まだ枝がさほど伸びていないメイヤー オブ キャスターブリッジは、難なく誘引完了。トレリスに伸びていたバタースコッチは、アーチに誘引しなおす。というのも、アーチにからませていたロココが、テッポウ虫の被害にあって根元から折れてしまったため。ロココは、残っていた綺麗なシュートを挿し木にしておいた。運良く根がでたら、鉢で育てようと思う。最後に新雪にとりかかる。旺盛なつる薔薇。枝は、うちにある薔薇の中でももっとも太くて固い。のこぎりも動員しての剪定は、まったく骨の折れる作業。最後に勢い良く伸びたシュートを引っ張って誘引し、作業完了。この新雪、施肥のときに根元に去年に引き続きこぶを見つけた。そんな事を感じさせないほど今年は良く花も咲いたし、シュートも伸びた。こぶを綺麗に取って、木酢液に漬けたニンニクを株もとにたっぷり埋め込んでおく。以前、この方法で同じくこぶの出たバタースコッチが復活している。注意深くこのまま見守ろう。保険のために、この秋少し離れた所にスノーグースを植えた。この苗の真上は、新雪の太い枝を落として光が差し込むようにしておいた。

剪定をしていて気がついたのは、古い枝の切り口に開いた丸い穴。テッポウ虫?と恐れたが、鋏で切るとなかから蜂のような小さな虫がでてきた。どうやらこの子の幼虫が犯人らしい。羽化した後、この穴の中で越冬中だったのか。冬越し中なのは他にも薔薇の枝についたカマキリの卵。そっと卵の塊が落ちないように誘引し、春の庭の番人を彼らにたくす。
冬は、1年中で一番ガーデナーが忙しい時期。寒風の中で、次々と大仕事をこなしていく。手は、すでにひっかき傷だらけ。でも、無数の傷を眺めてなんだかうきうきしている。そして、冷えこむ夕暮れどきに葉も花も付いていない裸の薔薇の枝をほんのひととき見つめて、なんともいえずいい気分になる。何よりも想像力をかきたててくれる冬の庭がそこにあるから。


2000. 12. 17  (毎朝霜が降りるようになり)
「冬の訪れ」


2週間ぶりの庭仕事。紅葉だ、オフ会だと庭の番人が出歩いている間にも庭の時計はどんどん進んでいる。セイジたちはこのところの冷えこみですっかり縮れてしまい、見るからにみすぼらしい。まずこれを片付けないと、一日が始まった気がしない。アメジストセイジは、薔薇のボーダーの一番奥、家の壁に沿って植えてある。冬はここが温かくて居心地がいいらしく、特に防寒しなくても毎年冬越しできるのだ。庭の中心部では、こううまくはいかない。この、アメジストセイジ、春先から秋口までは薔薇の奥でおとなしくしているのだが、秋も深まってくるとすごい勢いで伸びだして、薔薇を覆い尽くすように咲いてくる。黒点でやや寂しくなった薔薇の枝を隠しながら。セイジにとっても私にとってもこの植え場所は最適な場所なのだ。

縮れたセイジをすっかり取り払うと、何ヶ月ぶりかで庭の土が見えてくる。あいた所にすかさず種からのコーンフラワーやニゲラの苗を植えこんでおく。くっきりと美しいのは、常緑のコニファー、オリーブのしなやかな枝葉、それからたっぷりと茂ったクリスマスローズアウグティフォリウスのぎざぎざの葉っぱだ。冬場も寂しくないようにと、意識的に常緑のものを植えている。西側ボーダーには、アオキのサルフレア。黄色の斑が入った美しい低木。今月末につる薔薇の剪定と誘引がすめば、庭は新年に向けてすっきりと整う。冬場の静寂もまたいいもの。

最後に届いた百合の球根を植える穴を掘る。注意深く場所を選んだつもりが、すでに先住人あり。今は、静かな茶色の地面だが土の下には夥しい数の芽と根っこが春に備えている。にぎやかなのは餌台に集まるシジュウカラたち。だんだん慣れてきたのか庭に私がいてもすばやく餌台に止まって向日葵の種をさらっていくようになった。一握りの種は、夕方には必ず空っぽになっている。彼らのお食事コースになっているということだろうか。来春の薔薇にたかるいもむしたちも彼らのご馳走になってくれることを祈る。



2000. 12. 3 (初霜が降りた翌日)
「冬咲きたんぽぽ」

 昨日、初霜が降りた。車のフロントガラスが真っ白になった。が、まだ霜は庭の奥までやってきてはいない。ボーダーに残っている白いインパチェンスに、まだ花が咲いているくらいだから。しかし、安心してはいられない。まず、耐寒性の弱いラベンダーセイジを抜くことにする。まだ深いブルーが美しい花穂は切りそろえて逆さまにつるし、ドライにした。すでに秋のうちに挿し穂を切って挿し木をしてある。フレームのなかで冬越しの準備は万端だ。フレームは、ビニールをかぶせただけの小さな簡易温室である。(左下写真)この中で、ロベリアなどの半耐寒性の苗と、デルフィニュウムの苗などを冬越しさせる。デルフィは本来充分な耐寒性がある植物だが、今年は、たいへん生育が遅れているため、フレームに入れて生育を促す計画だ。生育不良には、秋の日照不足が影響しているらしい。

 少々気が早いけれども、バラに元肥として生ごみから作った堆肥を施した。バラ用に古土を使わず、牛糞とクンタンで作ったものだ。生ごみのほかに、カニガラもたくさん入れてある。土を使わないためか、多少臭いがきつい。施すときによく土と混ぜ、上から木酢液をかけると臭いはかなりおさまった。それでも息子たちは、鼻を抑えて訴えてくる。もとより、臭いとは縁遠い生活、臭いの体験も勉強だ。「これが、いい花を育てるのよ。」と、やはり強烈な堆肥で育てたジギタリスが咲誇るターシャチューダーの庭を思いながら息子たちに話しかける。

 シジュウカラが、ひっきりなしに庭を訪れている。バラに元肥を施すときに、彼らが止まり木にしているいつもの茂みの下で、夥しい向日葵の種のカラを見つけた。よく見るとカラだけでなくまだ中身を食べていない種も少々見かけられた。と言うことは、来春は、庭のあちらこちらで向日葵の発芽を見るということか…?来年用の食料のための種まきを、シジュウカラが故意にしているわけでもあるまいが、たくさんの向日葵の発芽を想像すると思わず苦笑してしまう。

 まだ、なごりのバラが咲く中、ビオラやパンジーに小さな蕾が次々とついている。この最初の小さな蕾を見つけたときが種まき園芸の醍醐味のひとつだ。

 土曜日に、近くの谷戸を散策した。谷戸は、雑木林と水田と湧水の小川の3要素からなる場所。自然と人とが共生できる暮らし方を私たちに示してくれる豊かな場所だ。刈り取られた水田には籾殻が小山になり、クンタンにいぶされるのを待っていた。あちらこちらに、山のような堆肥も積まれている。春の植付けの準備だろう。ふと見ると、足元に鮮やかな黄色の花が咲いている。たんぽぽだ。冬に咲くたんぽぽなんて聞いたことがない。どきん、とした一瞬だった。




2000. 11. 26 (小春日和)
「冬の準備いろいろ」

(シジュウカラの餌台、即席風)

まだまだ薔薇もセイジも花盛りだが、霜の降りる季節を思って、心せわしく準備をしている。園芸家は常に今あるところの庭ではなく未来の庭を見ているのか。

まず、苗床で今一つ生育が良くない秋蒔きの苗たちを少しづつ庭のあちこちに定植する。たくさんの苗をちょっとしたスペースを見つけて手早く植えこんで。このうちどれかが環境が合ってうまく根付き、冬越しに成功するだろう。

ホームセンターで安く売られていた見きり品のムスカリ60球とシラーシベリカ60球も、ばらばらと節分の豆まきのように西側ボーダーにばら撒き、落ちたところに次々植えこんでいく。この秋植えこんだクリスマスローズの子苗の合間をぬって、自然な感じで咲くように。

冬場の愉しみの一つである野鳥を庭に呼ぶために、小さな餌台も工夫した。使ったのは、ホームセンターでよく売られているような小さな鉢受けの金具。陶製の皿をその上に置き、シジュウカラの好物である向日葵の種を入れた。かわいいお客様たちは、庭の主がうちの中に入ったのを見計らって、群で現れる。用心深く餌台から種をひとつくわえ、さっと近くの薔薇の茂みに隠れ、そこでゆっくりとご馳走をつつき始めるのだ。小鳥たちは、晩秋になってもまだ執念深く薔薇の葉をかじっている青虫たちのことも見逃さない。薔薇の茂みの中で目ざとくそれを見つけ、くちばしにくわえては持っていってくれる。

もうひとつの冬の愉しみ、それは庭木を電球で飾ること。うちの近くの緑山の住宅街は、このシーズンになると豪華な飾り付けをすることで全国的に有名なようだ。緑山ほどにはできないが、それでも少し試しにやってみようということで、珍しく(?)夫と庭のことで意見が一致。まず、大きくなったゴールドクレストを使ってのクリスマスツリーづくり、そして、西側ボーダーのハリエンジュフリーシアに200球10メートルの電球を2人でつけた。大喜びなのは、下の息子。

庭のコニファーを剪定した枝を使って、リースも作った。リース台は、庭のハーブの茎やナツユキカヅラのつるを使って作ったものを利用。去年の夏に拾ったまつぼっくりとクリスマスツリーに使った残りの赤いリボンも使って。シンプルだけど、コニファーの香りに包まれた作業がなんといっても楽しい。

この週末は、息子を連れて多摩動物園にも行った。広大な雑木林の合間の広々としたスペースの中に様々な動物たちや鳥たちが暮らしている。何百という蝶が温室の中を群れ飛ぶ昆虫館は、圧巻。小さなハチドリも放し飼いにされていて。また来ようと思う。


2000. 11. 19 (秋晴れ、散歩日和)
「薔薇園にて」


(セレンスとブラックパンジーの寄せ植え、下の息子が撮影)

最低気温が10度を切った。そろそろ耐寒性の弱い植物たちの冬越しの場所を割り当ててやらなければならない。この上の息子が作った寄せ植えもその一つ。セレンスは温暖な土地であれば露地で越冬が可能。しかし、厳寒期に霜がきつく降りる我が家では、軒下当たりで越冬させるのが安全だろう。そのほかにも、秋に芽出しをしたものの中に、ロベリアなど半耐寒性のものがいくつかある。最低気温が5度を切る前に、べたがけシートをかけたり、フレーム内にとりこんだり。これも限られたスペースとの勝負、庭造りにはパズルを解く才能も必要だ。

今年は、秋薔薇が例年に増して好調だ。今までは、無農薬の庭の薔薇は、夏に黒点で葉を落としてしまったら秋薔薇はみすぼらしいほどしか咲かないもの…とばかり思っていた。ところが、今年は、夏にすっかり葉を落としてしまっていたバタースコッチでさえ、9月から綺麗な新芽を次々と展開し、今ごろになって大輪の花をいくつも咲かせている。そのほかの薔薇も、春の花数にはもちろん及ばないもののセイジに下葉を補ってもらいながらやはり大輪の花を咲かせているのだ。おととしから本格的に始めた、生ゴミ堆肥を使っての土作りがようやく功を奏したのか、あるいは、菌根菌を施肥のたびに入れてきたことがよかったのか。今年は、夏の元肥後にも一月に1度追肥を行ってきた、それもよかったのか…。そういえば、木酢液もこの秋にはまだ1度くらいしか撒いていない。木酢液を撒くことすらすっかり忘れていたくらいだ。いろんなことが複雑に影響しあって、薔薇が丈夫になってきたということだろうか。暖かい秋にも助けられているのにも違いないが。

花も咲いているが、今年は気がつけば、シュートの伸び方もものすごい。イングリッシュローズとコーネリアを植えたトレリスの一角などは、まるでイバラの館。これをどうこの冬に剪定誘引すればいいのか、眺めているだけでも途方にくれてしまう。薔薇を咲かせることはさほど難しいことではないが、品種にあった仕立て方をしてあげられる様になるまでは、相当な知識と経験が必要なようだ。

先日、村田ばら園さんを訪れたときに、村田さんの奥様からとてもいいアドバイスをいただいた。うちにはスタンダード仕立ての「LDブレイスウエイト」というイングリッシュローズがある。白い「新雪」というつる薔薇の前に高い位置で深紅の薔薇を咲かせようと思い、おととし思いきって購入したものだ。ところが、LDは継ぎ目の位置から直立したシュートをどんどん高く伸ばし、トップがこんもりとした樹形のスタンダードのイメージとは程遠い。LDは、カタログによると開帳型とあるが、私の庭ではなぜかこんなふうにとんでもなく伸びてしまうのだ。私の剪定の仕方にも問題があるのだろうが、今となっては、どうしてLDのスタンダードになんかしたんだろうとついつい思ってしまう。そのことを奥様に相談した。すると明快な答え、長く伸びたシュートを下に引っ張ってみたら?とおっしゃるのだ。なるほど、そうすれば、シュートを切る必要も無いばかりか花付きもよくなり、樹形の問題も解決する…!また、そのほかの薔薇についても、例えば「グロワールドディジョン」は、黒点病にかかりやすいけれど丈夫でとても花付きがいいとか、「レディヒリンドン」は、グロワールよりさらに花付きがいい上に見かけによらずとても丈夫であるとか、また、「ジャクリーヌデュプレ」は、横に広がっていくので、ある程度上に伸ばし固定したらあとはしだれるように仕立てると花付きがよくしかも省スペースで育てられるとか、園芸書には絶対に載っていないような実践的なお話をたくさんお聞きすることができた。

家に帰ってきて、早速LDの長く伸びたシュートを下に引っ張り、枝先を固定して柳がしだれるようなドーム型にしてみた。まだ枝は柔らかく、思ったよりも引っ張るのは簡単な作業だ。もちろんLDではなく、もっと自然に横に広がってしだれて咲くような品種を最初から選んでおけば、こんな苦労は無かったのだろうが。誘引した枝から、来年どのようにステムが伸びてそしてその先どのように成長していくのだろうか。どきどきしながら春を待つことにする。

品種に合った薔薇の仕立て方を知る、それは、実際に育てている方のお話を伺うのが最良の第1歩。村田ばら園さんは、そういった意味でもたいへん素晴らしいナーセリーだ。訪れるたびにお聞きする村田さんの奥様のお話はそれだけで本が1冊書けるのではと思うほど示俊に富んでいる。

いつの日にか自分の庭でも思い通りに薔薇を仕立てられるようになれればと思う。そのためには、試行錯誤も観察もまだまだ重ねなければ。

2000. 11 5 (久々の快晴)
「酒と薔薇の日々」
(薔薇酒に使うローズヒップ)

”今年は暖冬”との天気予報でのアナウンサーの声。しかし、来たる2001年からは、この程度の暖かさだと”平年並”と表現するようになると言う。要するに暖冬が当たり前になっているということか。どおりで今年の秋は歩みが遅い。今日などは、夫と息子が庭でまだ蚊に刺される始末。早朝の冷えこみもまだそれほどではなく、ようやく夜露がびっしりと降りるようになった程度。
 今ごろになって庭の薔薇たちはにわかに元気付き、夏に黒点で落したはずの葉を青々と茂らせ、あるものはぐんぐんシュートを伸ばし、またあるものは、春と間違えたかと思うほどたくさんの蕾を付けている。「もう、11月よ。」と思わず声をかけたくなってくるほどだ。このまま暖かい日が続けば、おそらく今月半ばに、また薔薇のピークがやってくるだろう。もちろん、無農薬の庭の秋薔薇は、春ほどたわわには咲かない。それでも、花色は春よりもさらに深く、花持ちも良いので花数が少ないことも思わず許してしまう。

 庭の片隅、ミントブッシュの枝もとにカマキリの卵を見つけた。いくら暖かい秋とはいえ、生き物たちはちゃんと冬支度を始めている。そういえば、この週末は、シジュウカラのつがいが庭で何やらついばんでいるのを何度も見かけた。山にいよいよ餌が少なくなってきて、里にも下りてきたのか。近くによってもさほど驚いた様子も見せないが、カメラに収めるのはなかなか難しい。
 この週末は、ゆっくりと花を眺める暇も無く、次々と園芸作業をこなした。雨の週末がこのところずっと続いていたため、ダンボールに入れたままの球根も、芽出しをしただけの小さな苗もずっと手をつけることができなかった。それを昨日今日でいっきに片付けた。夫は夫で、壊れた作業台を新しく作り直してくれたり、夏に切った山茶花の根っこをブルドーザーのように3本も起こしてくれたりしておおいに助かった。ただ、夫と私では庭に対しての好みが少し違う。彼は、大きな体に合わせてか、広々とした庭が好き。勢い良く伸びた薔薇のシュートも良く茂ったセイジの茂みも春に備えたコンテナの数々も、彼にとってはビジーな代物でしかない。彼が、園芸バサミを持って庭をうろうろとしていたとしたら、それは注意深く見守っていなければならない瞬間だ。やっと大株になったローズマリーの茂みだって、これから黄葉して風情がでる大株のフウチソウだって、ただ通路にはみ出ているというだけの理由であっという間に刈りこまれてしまうのだから。
 子どもたちとはこの週末、それぞれのコンテナ(「ぼくの庭」)を作った。上の息子は自分で蒔いて育てたブラックパンジーとセレンスを寄せ植えにした。「この組合せ!」と、かなり前から決めていたようだ。下の子は、種まきを手伝ってくれたピンクのルピナスにあわせるのに指差したのは、新種のビオラ・ブルースワールの写真入ラベルだった。なんと目が高い。お気に入りの犬の置物といっしょに可愛い寄せ植えができあがった。

 夕方、夕食の下準備を済ませてから庭に出た。刻一刻と夕闇が迫る中、まだ枝に残しておいた”コンプリカータ”のローズヒップを摘んだ。1ヶ月ほど前に漬け込んでおいた薔薇酒は、もう琥珀色に染まっている。その実を摘んだころはまだそれほど赤く染まってはいなかった。景観のために残しておいた実は、夕日を染め上げたように美しい。これを洗って、また先ほどの薔薇酒の瓶に追加して漬けこんでおく。3ヶ月もすれば飲めるようになる。1年ものの去年の薔薇酒もまだ結構残っている。熟成が進んで、この先どんな味わいになっていくのだろうか。


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