4月〜8月

「今春の薔薇管理」 「緑としての薔薇」


2002.8.6 「緑としての薔薇」
暑い暑い夏である。木陰にいても汗が流れる日中、うなだれたようになっている鉢薔薇は、夕方の水遣りで生き返る。地植えのものは、強い日差しももとのともせず、たくましいシュートを伸ばしている。薔薇とはなんと丈夫であるか。”暑さに強い”植物と言ってもいいのではないかと感じてしまう。

化学農薬を使わずに薔薇を育てて、この季節一番の悩みと言えば、黒点病であった。梅雨の湿気と高温で、黒点病が蔓延し、薔薇は、ただの裸の”枝”となってしまう、そんな年が続いた。夏に寂しくなる庭の緑を補うために、薔薇の合間に低木や葉物を意識的に植えた。黒点病は薔薇につきものとあきらめるうちに秋にはまた綺麗な葉が展開して。でも、夏に力を落とした薔薇の秋の花は、どうしても寂しいもととなっていた。黒点病さえ克服できれば、自信を持って無農薬で薔薇を育てられると言えるのだが。

ところが、昨年くらいからであろうか、夏に黒点病で葉をすっかり落とすということが無くなってきたのだ。去年は、雨が少なかった。そのせいもあるのかなと考えていた。今年は、梅雨時に雨が長く続いた。ところが今年も黒点病は蔓延しなかった。もちろん、全く出ていないということは無い。所々に黒点で黄色くなりかけた葉は確かにある。が、広がらないのである。

夏も緑を蓄えた薔薇は、樹木としてとても美しいものである。真夏には、我が家の薔薇はさほど咲かない。所々にぽつりぽつりとポンポン咲きのような小さな花が見られる程度である。それはそれでとてもいとおしい光景であるのだけれど。花が少なくても、葉を保った薔薇の庭にいると緑に包まれた感じがしてとても心地いい。品種によって葉にも個性があり、見ていて楽しい。薔薇の葉も大切な庭の要素だと改めて感じさせられる。

では、どうして、あんなに悩まさせられた黒点病がこんなにおとなしくなったのだろうか?
散布液、であるが、梅雨時に雨が続き、週末ガーデナーの悲しさで撒くタイミングを逸しているうちに夏を迎えた。暑くなってからも、撒いた後の葉やけを警戒して撒いていない。
去年から土の表面に撒き始めた米ぬか、これは今年も続けている。去年はまだおそるおそる撒いていたのがだんだん自信がついてきて、最近では、月に2〜3度は撒いている。それに加えて今年は、蟹ガラも大量に撒いた。米ぬかも、蟹ガラも、土の表面の菌の状態を良くしてくれるという。このことが、黒点病の蔓延を防いでくれているのだろうか?

さらに、今年試みていることがある。薔薇の剪定枝や他の植物を切り戻したりしたときの残さ、これを短くはさみで切って、ボーダーの土の上に置き上から米ぬかをふる。緑の小山が1週間ほどで真っ黒になり、かさが減っていって。いわゆる”土ごと発酵”をねらってみたのだが、今のところ可もなく不可もなくといったところだ。とりあえず害は無さそうなのだが、これも、黒点病がおとなしいこととなにか関係しているのだろうか。

自然に朽ちていく残さの小山は、見方によっては見苦しいかもしれない。が、これを始めてから私は不思議な安堵感を庭で感じるようになった。深い山か森で感じるような、そんな感覚、なんと表現したらよいのだろう…。



夜、なのに、裏の竹林では、セミが激しく鳴いている。外の風はもう冷たくなってきた。緑を通り抜けたせいだろう。仕事で久々に都心に出た先日、アスファルトとコンクリートから迫ってくる熱気に辟易した。早く家に帰りたいと思った。コンクリートで固められた歩道に、草の種を蒔いたらどうなるだろうと思った。小さなひび割れや隙間からでも芽生えるような丈夫でたくましい草の種。雑草が生えた都心の道、きっと涼しい風が通ることだろう。


2002.4.8 「今春の薔薇管理」
いまだかつて無いほど、早足で訪れた春。チューリップは、早咲きのものも中咲きのものも、そして遅咲きのものもみんないっぺんに咲いてしまったような印象だ。薔薇の芽も気温に敏感。あっという間に葉が展開し、蕾を次々と付けて。庭に居ると、今がまだ4月初旬だということを忘れてしまいそうになる。虫達の活動も早い。2月ごろから、動き出したアブラムシのところには、ヒラタアブ。この週末には、いよいよ蜂たちも活動し始めて。庭の片隅で越冬していたテントウムシも元気な姿を見かけた。
アブラムシといえば、この春は、いっこうに姿を見ない。去年の春、悩まされたウドンコ病もすっかりなりを潜めている。ただ、ゾウムシだけが、いたるところの葉を縮らせて、活動に余念が無い。庭に出ると片っ端からその縮れた葉を摘み、ポケットに入れる。決して地面に捨ててはいけない。その葉にゾウムシは卵を産み付けているのだから。ゾウムシの個体数が減ることを祈って行うこの地道な作業は、結局庭中の薔薇に触れていくことになる。私も庭の一員、ゾウムシの天敵、そんな心意気だ。

さあ、忘れないうちに、冬からこれまでの薔薇管理を振り返っておこう。剪定&誘引だが、今年は1月初旬に済ませてしまった。年々暖かくなる気候、今年は薔薇の芽の動きも早くなるような気がして。予感はなぜか的中、いつもなら木バラの剪定をする2月始めにはもう、薔薇は芽を展開し始めた。12月の寒肥に続いて、このとき、芽だし肥として、バイオゴールドを薔薇の根元に置く。その後、ようりんをぱらぱらと撒き、そして、少し暖かさを感じるようになった2月末、米ぬかを一面に散布した。3月中旬すぎに、木酢液100倍&璧露1000倍&トウガラシエキス500倍を10日おきほどごとに散布し始める。このころ、もう一度米ぬかを一面に散布。下旬には、カニガラを土の表面にマルチング感覚で撒いた。バイオゴールドの分解が早いため、3月下旬にはもう一度軽く一握りづつ、ようりんとともに薔薇の根元に置く。

そして迎えた4月、木酢液を今度は50倍に近い濃度で璧露やトウガラシエキスとブレンドして撒いた。肝心のゾウムシは、なかなか抑えられないが、縮れるのは葉ばかりで、蕾の被害が去年よりまだ少ないような気がする。

薔薇の管理にマニュアルは無いと思うことがある。庭主の創造性やインスピレーションみたいなものが、薔薇との対話の中で年月をかけてその庭に合った栽培法を産み出していくのかもしれない。ある庭でうまくいった方法が、他の庭でも必ずうまくいく、あるいはあてはまるとは限らないのではないだろうか。もちろん、ネットや本からの情報収集は大切。でも、それは、自分なりに応用していくものだと思っている。そういった、応用のいろいろが、農文協”現代農業”の記事にたくさん見受けられて楽しい。むろん、薔薇に直接関連した記事は少ない。でも、生態系を生かした農業について熱く語られていて、休日の午後、届いたばかりの冊子を読みふけってしまった。

西壁に誘引したマダムアルフレッドキャリエール、つる薔薇のように横に倒しての誘引は、スペースの関係上できなかったのだが、斜めにのびたつるにびっしりと新芽が出て、その新芽一つ一つに蕾が付いている。薔薇の性質は育ててみなければわからない。

inserted by FC2 system