5月〜6月


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シジュウカラの子育て
今年のバラ
「新しい、薔薇との出会い」



2001.6.25 梅雨の中休み
「新しい、薔薇との出会い」

梅雨とはいえ、毎週末雨が上がるこのペースが嬉しい。

土曜日は、大仕事を行った。
まず、大きく枝を広げたニセアカシアフリーシアの枝を切る。広がりすぎた部分をすっきりさせると葉の重みで幾分曲がっていた幹もしゃんと伸びて。
一休みする間もなく、今度は、オベリスクにからませてあったマダムイザークペレールの誘引をほどく。黒のオベリスクは、マダムイザークがうちにやってきたとき、彼女用にと設置したもの。小さな苗だった彼女も年々枝を伸ばし、去年の冬の誘引では、オベリスクいっぱいに枝を絡ませることができた。しかし、今年のシュートの伸び具合を見ていると、来年は、こんな小さなオベリスクには納まりきりそうにない。オベリスクのてっぺんから伸びた新しい枝が、もう壁に向かって届きそうだ。
もともと小さなオベリスクには、不似合いな薔薇だったのかもしれない。もっと伸び伸びとつる薔薇のように育ててあげた方がこの薔薇のよさを引き出すことができそうだ。そんなことにようやく気付いた。
土に挿しこんであったオベリスクの足をゆっくりと抜く。絡んでいた枝はすべて誘引をほどいてあるが、枝を傷めないようにオベリスクをはずすのには相当の慎重さが必要だ。引っ掛かりを少しずつ外しながら、ようやく成功、ほっとする。今度は、冬に設置したアルミ線の下地を利用して新たに下地を追加していく。そうやってできた壁のスペースに、マダムイザークの長く伸びた枝を誘引した。
今度は、先ほど抜いたオベリスクをマダムが絡ませてあった位置より少し手前にもう一度設置する。そこに、先日入手したばかりのセシルブルンネとジャクリーヌデュプレを植えた。新苗だが、もう蕾を付け、花を咲かせている。どちらも四季咲き性抜群の個性的な容姿の薔薇だ。セシルブルンネは、小さ目のブッシュ、ジャクリーヌデュプレはシュラブなので、オベリスクからはみ出して伸びてしまう心配はないだろう。
作業を終えて一歩下がってオベリスクの周辺を眺めると、庭が少し広くなったような気がした。少し誘引場所を変えただけで、まだ2本も薔薇を植えるスペースができたことに改めて驚く。新しく植えた2本の薔薇の生長とともにきっとこの場所の風景に厚みが出てくるだろう。

南側の新雪も、先週末に古い枝を半分落し、空いたスペースに、スノーグースのシュートを誘引した。スノーグースは冬に大苗で植えたもの。新雪の木陰であまりよくない場所だったのにも関わらず、花を少しづつつけながらもシュートを3メートル近くも伸ばした。華奢な花に似合わず、強健で信頼できる薔薇と感心するばかり。そして、そのスノーグースの両脇に、バフビューティーとペネロープの苗を植えた。バタースコッチからのグラデーションを考えた苗の選択である。どちらも、ほどほどに伸び、そして秋までよく咲いてくれるバラだという。

西壁には、冬に植えたばかりのマダムアルフレッドキャリエールがぐんぐん屋根をめざす勢いで伸びている。数年後を待たずとも、西壁の北側を覆ってしまうだろう。驚くばかりの伸び方だ。西壁の南側、エメビヴェールも、株もとからどんどん勢いのよいシュートが伸びてきている。その隣のソンブロイユの新苗もいたって元気。西壁の調度真ん中あたりには、グロワールドディジョンとオドラータを並べて植えた。ディジョンは四季咲き性が抜群によいつる薔薇。オドラータは一季咲きだが、白い花がとても可憐なつる薔薇だ。

アーチには、冬にテッッポウ虫にやられたロココの替わりに、アリスターステラグレイの勢いのよいシュートが伸びている。アーチの隣のトレリスでは、去年の秋に植えたブラッシュノワゼットが次々と蕾を付けながら伸びて。

北側の道路に面したフェンスには、アルベリックバルビエを植えた。日陰に強く、ランブラーの樹形は低いフェンスにぴったりだ。もちろん花時には通る人を魅了するだろう。

壁薔薇のほかには、鉢で育てるのが適しているチャイナローズ達がこの春仲間入りした。オールドブラッシュ、サイザウチェン、ぺルルドールが、新苗にも関わらず、次々と蕾を付けている。咲くたびに鉢を移動させて庭のアクセントとして使っていこう。そのほかに、モスローズのサレット、紫玉も入手しており、とりあえず鉢で育てることにした。いずれ、どこか植え場所を見つけてあげよう。

薔薇を育て始めて8年あまり。ようやく、農薬を使わないで薔薇を咲かせるノウハウだけはある程度身に付いたように思う。しかし、庭で薔薇を”使う”という域に関しては、なんと試行錯誤が多いことか。冒頭のマダムイザークペレールに象徴されるように、薔薇の本質を知らないで植えつけてしまった経験は、枚挙にいとまがない。それは、お見合い写真のような薔薇のカタログに魅せられて、次々と庭に導入した結果ともいえる。これからは、薔薇を庭でただ咲かせるだけでなく、使っていこう。新しい、薔薇との出会いと感じている。

「庭造りは、薔薇と人との共同作業だ。」とは、村田ばら園でいただいた、村田晴夫さんの言葉。心に残る。


2001.5.27 雨
「今年のバラ」

先週からの雨は、梅雨の始まりを感じさせる。例年より1週間ほど早い。ふり続く雨は、あともう少しという時期のバラにとってはやはり重すぎる。湿気と蒸し暑さで蚊取り線香がとうとう必要となってしまった。雨の合間を見ながら木酢液を散布したり、花がら摘みをしたり。バラと入れ替わるように、柏葉アジサイがいくつもの大きな花房を豪華に開き始めている。

今年のバラは、例年どおりとても良く咲いてくれたと思う。ただ、ここ何年も出たことが無かったうどんこ病が出てしまった。昼夜の温度差が大きかったためか。また、いつもの年よりも少し香りが弱かったような感じがする。それは肥料を変えてみたためだろうか。ちょっとした気候の変化や施肥などの影響で、バラのできは毎年微妙に変わってくる。

今年は、意識的に冬からずっと木酢液をほとんど撒かずにやってみた。4月下旬になってうどんこ病の発生を見て、必要と思われるところに何度か撒いた程度だ。また、施肥に関して言えば、例年よりもぐっと追肥の量や回数を減らした。数年前、やはり同じように追肥の回数を減らしてみたことがあった。が、そのときは明らかに花付きが悪くなってしまいバラの季節は全く寂しいものだった。そのときと今と何が違うか、それは、生ゴミ堆肥、そして米ぬかである。

昨日、地植えにしていたチューリップを抜いた。ちょっとシャベルを入れると、ぴょんぴょんたくさんのミミズが顔を出してくる。土はもちろんとても柔らかい。このあたりにも、冬場に生ゴミ堆肥と米ぬかを散布しておいた。その後の追肥は特に行っていないがボーダーの植物の生育は旺盛そのもの。バラの追肥が少なくてすんだのも、きっと土そのものが肥沃になってきているためだろう。

来週には、ボーダーにお礼肥えとして、冬の間に仕込んでおいたカニがら入りの堆肥を撒こう。それから、もちろん米ぬかも。そして、炭も細かく砕いて土の中に混ぜ込んでみようと思う。木酢液の散布もこれからはしばしば必要になってくるだろう。

できることなら、土の力を高めることで、木酢液などの保護液の効果に頼らずともバラが元気に生育できるようにしたい。化学農薬をただ高価な漢方薬に置き換える”無農薬栽培”というのではなしに…。微生物と、虫や鳥たちを庭に呼び入れ、庭があたかも自然の一部であるかのように。下の表は、今年のバラ栽培の記録である。昨年と比較して意識的にずいぶん手を抜いているがそれでも充分花は咲いた。夢は、実現するだろうか。

作業 昨年まで 今年
木酢ニンニク液 冬に高濃度散布。花時まで1〜2週に1回散布。碧露は毎回使用。 4月下旬になってうどんこ病の発生を見てから局所的に週1〜2回散布碧露は、時々使用。
元肥 生ゴミ堆肥、骨粉、油粕、草木灰、ようりん、クンタン 昨年と同様
追肥 1ヶ月に一度、骨粉、油粕、草木灰、ようりん、クンタンを混ぜたものをシャベルで2〜3杯株元に。 2ヶ月に一度バイオゴールドを一握りづつ株元に。
米ぬか 使用せず 2月、4月、6月に株元の土に混ぜこむ。
お礼肥え 骨粉、油粕、草木灰、ようりん、クンタン 生ゴミ堆肥、炭を砕いたもの、
バイオゴールド、骨粉、草木灰



2001.5.5 晴れときどき曇り
「シジュウカラの子育て」
南側のトレリスに灯りがともった。一重のバラカクテルだ。鼻を近づけると、強い香り。近くを通るっただけでも良い香りに包まれる。こんなにカクテルって香ったかしらと思う。そして、バラの季節がまたやってきたことを全身で感じとっている。

少し、うどんこ病にかかりながらも、バラの葉は豊かに茂っている。たわわについた蕾が膨らんでいくのを見るこの時期が一年のうちで一番楽しい。早朝から気ぜわしく庭仕事。旺盛な緑の生長に合わせて、支柱を施したり植え替えをしたり、思いきって剪定したり。計画どおりというコーナーの方が珍しい。バラが健やかに育つように、そしてもっとも美しく見えるように庭を整えねば。

夢中で作業をする傍らをバサっと羽音をたてて庭に飛びこんでくるのはシジュウカラ。私からほんの1メートルくらいの所を平気で飛んで、一目散に巣箱に入っていく。巣箱の中からは、ピーピーとにぎやかな雛の声が庭中に響く。と思う間もなくまた、巣箱から飛び出してくる親鳥。「ちゃんと糞をくわえて行くんだね。」とは、庭でニジマスの燻製に挑戦していた夫。シジュウカラはとても綺麗好きだ。雛の糞は必ず親鳥がくわえてどこか遠くに運んで行ってそこで捨ててくる。「シジュウカラは、とてもお行儀がいいのよ。餌台の下にヒヨドリが撒き散らした向日葵の種も、綺麗に拾って食べるんだから。」と、私も思わずシジュウカラの肩を持つ。この時期の親鳥の餌捕りはとても頻繁だ。ほんのわずかな時間で次々と虫をくわえては、巣箱に入っていく。巣穴からは大きく口を開けた雛の姿がちらちらと見える。雛は、親が来るのがわかるのだろうか?親鳥が近づいてくるとにわかにさえずり声が大きくなるのが不思議だ。「シジュウカラは、ちゃんとどの雛に餌をあげたかわかってるのかなあ。」と、また夫。雛達がみんな同じように大きくなるように親鳥も気を配りながら餌を与えているのだろうか、それでもきっと要領がいい雛がいて、他の兄弟よりも頻繁に餌をもらってるのではないだろうか、と想像が膨らむ。

昨日は、渓流の釣り場に行ってきた。私は、夫と子ども達が釣りをしている間、母と火を起こし、コーヒーを淹れピラフを炊き、肉を焼いて時間を過ごした。釣りの成果に意気揚々と戻ってきた子ども達。釣った虹鱒のおなかには、庭から摘んで行ったローズマリーとタイムの枝を入れてホイル焼きに。ピラフにも庭のレタスを散らして。ちょっとした工夫で、野外でもおいしく食事ができるのが嬉しい。今日は、持ちかえった十数匹のニジマスを燻製にしながら、小さな兄弟達の誇らしげな笑顔を思い出していたのだろうか、夫は。昨日は、餌付けと魚を針から外してやるので忙しくて、自分が釣るどころでは無かったようだが。

シジュウカラの子育ても今が一番たいへんなのだろう。見ているとほんとうに健気の一言だ。毎日、雛のさえずり声は大きくなっていく。雛の生長をそれが何よりも物語っていて。庭に活気が満ちている。庭から感じるとても充実したこの気分は、親鳥たちにとってもまた同じだろうか。

※この数日後、シジュウカラ達は私たちの目の前で巣箱から巣立っていきました。その一部始終はこちらに。
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