1月〜2月


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「エメヴィべール」 「種まきの準備」
「土ごと醗酵方式」


2001.2.17(晴れ まだ風は冷たい)
「土ごと醗酵方式」
 いつもの無農薬野菜の宅配業者から取り寄せた、米ぬか5kgを庭土の表層に混ぜた。RayさんやKIKKOさんが掲示板で教えてくださったHP「現代農業」 の10月号のページにあった「土ごと醗酵方式」という土づくりの方法を試してみるためだ。
 米ぬかは、微生物がもっとも好む資材のひとつ。これを土の表層に施すとそこで微生物が爆発的に増える。増えた微生物は今度は、土の中の有機物を餌にしてどんどん地中に潜っていく。その過程で土を耕し、土を肥やしていくというのだ。
 一番簡単なのは、未熟な有機物(刈り取った雑草や稲わらなど)とともに米ぬかを土の表層に施しておく方法。土ごと醗酵し、その場で肥えた土壌ができあがる。もちろん、堆肥と共に米ぬかを土に入れても、堆肥の効果を高めてくれるそうだ。
 農家にとって堆肥づくりは、たいへんな労力がかかる。それを解消するために、化学肥料が大量に使われるようになった。しかし、それでは土はやせていくばかり。労力をなるべく使わずに、健康な土を作るために最近になって行われるようになった方法だという。醗酵した土は、真っ白な菌糸で覆われるのだそうだ。
 薔薇の植付けのときなどに庭の土を掘ってみると、不思議なことに4〜50センチくらいの深さまで、とても柔らかい。多分、人が掘り起こさなくてもミミズや菌類が耕してくれているのだろう。この働きをもっと強めることができれば、おそらく施肥の量が今よりずっと少なくても薔薇は育つのではないか…そんな考えが頭をよぎった。試してみる価値はありそうだ。
 幸いなことに、米ぬかはたいへん安価である。寒い時期ならば、臭いや虫の心配も無い。少しずつ、様子を見ながら。生ゴミ堆肥を初めてバラに施したときのように。庭は小さな実験場だ。


2001.2.12(曇り また少し寒さが戻って))
「種まきの準備」

 少しばかり早春らしい日が続いたと思っていたら、また寒さがぶり返した。連休の最終日、さすがに今日は外に出ていたくない。部屋を暖かくして、冷蔵庫の中から種袋の束を取り出した。春の種まきの準備だ。
 カップ一杯のお茶と種袋をテーブルの上に置き、小さな札に品種名を書きこんでいく。札に書きこむのは、品種名だけではない。発芽適温、覆土の有無、花色、草丈、花期、育てるのに適した環境など、種袋の記述からわかる様々な情報を簡単にメモしておく。こうすることによって、種まきのときにいちいち種袋を読み返す必要もなくなり、育てる過程においても簡単に管理のポイントを確認できるのだ。
 全部書き終えてから、今度はその札を発芽適温別に分けていく。2月〜3月に蒔くもの、4月のおわりから5月にかけて蒔くものというふうに。そして、分けた札と種袋をそれぞれ束にしてまた冷蔵庫の野菜室に戻しておいてた。
 春の種まきの第1弾は、来週末になりそうだ。まずは、早く蒔いて育て、暑い夏が来る前に咲かせたいものから。発芽適温からいうと、20度前後あるいはそれ以下でも発芽するものだ。その他の種は、ゴールデンウィークまで待って順番に蒔くことにした。夏から秋にかけて、活躍してくれる花たち、発芽適温が20度〜25度のものだ。
 早春の種蒔きは、発芽がひとつの関門になる。室内で、ある程度気温を維持しながら管理しないと容易には発芽してこないのだ。秋蒔きに比べてもリスクが大きい。そこまでして種を蒔くのは、早春蒔きにしたほうが花に会える確立が高いものがあるからだ。秋蒔きにしても耐寒性が弱くて冬越しが難しかったり、あるいは、同じ春蒔きでも蒔く時期が遅いと暑さのために花期が極端に短くなってしまうものがそうだ。ナスタチウムやエキウムは、後者の代表的な例だと思う。
 来週には、たくさんの平鉢が室内に並ぶだろう。日ごとに力強さを増す日差しがなんとも心強い。

【早春に室内蒔きとするもの】
その他
ガイラルディア ミムラス
ナスタチューム
マリーゴールドゴールデンジェム

フクシア
オステオぺルマム
クリーピアホワイト
ヘリオフィラ
ペチュニア(ダブル)
ブロワリア
フェリシア
エキウム
ニコチアナライムグリーン
クラーキアダブルミックス
ベゴニアセンパフローレンス

※上記は、2月18日に室内蒔きにしました。

【八重桜が咲くころ蒔くもの】
その他
向日葵インディアンブランケット カナリークリーパー
モネの向日葵
インパチェンスインパクトホワイト
サルビアブルークィーン インパチェンスさくら



2001.1.5(冬晴れの1日)
「エメヴィべール」
去年の秋、遠く九州から私の庭を訪れてくださったドクターがあった。手には「粉粧楼と」いう名のチャイナローズの苗を携えて。駒場の薔薇園で手に入れたその薔薇を飛行機でその日の夕方九州まで運ぶとおっしゃる。ご自宅では、たくさんの薔薇をまるで魔術師のように美しく咲かせていらっしゃるその方が、私の家の西壁を見てこうおっしゃった。「これは、いい壁ですね。といからといにかけて、壁にまったく傷をつけること無く針金を渡すことができますね。」その日から、まるで宿題を言い渡された子どものように西壁に這わせるつる薔薇選びの日々が始まった。

それまで、壁につる薔薇を這わせることは私の力では難しいことと感じていた。針金を渡すのも、高い位置に伸びたつる薔薇のシュートを誘引するのも、どうしても女の手には余る大仕事だと。しかし、ドクターの西壁を見つめる輝くような表情に接して、考えが変わった。私にもできるかもしれない、やってみようと。

さしあたっては、玄関近くに植えたマダムアルフレッドキャリエール、これを西壁の左半分に這わせよう。去年の夏に植えたもので、何本ものシュートがもう1.5メートル四方に伸びている。参考書を片手に、小窓に針金を巻き付け、そこからといに向かって3本水平に針金を渡した。キャリエールは、美しい白のつる薔薇。枝は細くしなやかでとても扱いやすい。針金に沿って水平に誘引しなおしておく。

次に、右半分の壁に這わせる品種を考えなければならない。まず思い浮かんだのは、もうひとつ白いつる薔薇としてネット上でも名高いソンブロイユ。早速、春苗を注文した。しかし、ソンブロイユだけで壁を覆うには、年数がかかりそうとの意見を掲示板でいただく。もう1品種、何を選ぼうか…?

キャリエールも、ソンブロイユも大輪で一つ一つの花がとても美しい品種だ。とすれば、それに合わせる第3の薔薇は、小輪房咲きの可憐な品種がいいだろう。できれば四季咲き性のあるもの。そしてつるには刺が少ないものが望ましい。ただでさえ梯子を使っての誘引作業は大仕事になるだろうし、その上刺がきつくては手に余るに違いない。そして、つるの伸び方は、ほどほどでなくては。万が一、2階や屋根まで上がるようでは、いくら美しい薔薇でも私にはとうてい扱いきれない。そんな条件を考えながら、様々な薔薇が頭の中に浮かんでは消えた。

まず、以前から憧れていた小輪房咲きの薔薇ポールズヒマラヤンムスク。これは、薔薇園で実物を見せていただき、あまりの刺のきつさに断念した。ボビージェイムスも候補に挙げたがやはり刺がきつく、私の壁には向かないことがわかった。白モッコウは、と思ったがこの子は間違い無く2階から屋根まで覆い尽くすように伸びてしまうだろう。アルベリックバルビエも考えたが、下垂して伸ばすには扱いやすそうだが上に上げるにはこまめに誘引してあげなければならないだろうし。そして、思い当たったのがエメヴィべールというつる薔薇。最近刊行されたつる薔薇について書かれた本に紹介されていたものだ。

エメヴィべールは、白の小輪房咲きの薔薇。ノワゼット系で四季咲き性があるという。行き付けの薔薇園で、実物の苗を見せてもらう。刺は少なく枝もしなやかで扱いやすそうだ。伸びは4.5メートルほどというから、伸びすぎて困ると言うことも無いだろう。なにしろ、葉が美しい。形が細長く引き締まっていて、黄緑がかった葉色がとても軽やかなのだ。薔薇園の奥様にも太鼓判をいただいて、早速鉢苗を入手してきた。去年出たシュートがもう、1メートルほどに伸びている。この春から花が見ることができるのが嬉しい。

明日は、出窓に針金を回して、そこからといに向かって水平に針金を渡して下地を作ろう。植物が茂っていない冬の間でなければこんな大掛かりな作業はまずできないから。そして、といのそばに伸びているストロベリーアイスの枝を少し落として、エメヴィべールを植えるのだ。春には、その隣にソンブロイユを植えこもう。壁は、何年後かには白いつる薔薇たちで満たされるだろう。白なら、ボーダーのピンク系の薔薇たちとも調和するはずだ。

薔薇は、花だけではない。伸び方、刺、葉の形、四季咲性、他の薔薇との調和などなどいろんな要素があってこその薔薇選びだ。そんな基本的なことに気付くのにずいぶんと年数がかかった。「この薔薇」と言うのではなく、「この場所に植えるこんな風景を描ける薔薇」というふうにようやく考えれるようになったように思う。それでも、まだまだ誘惑が多いのは事実。薔薇の世界は、奥深い。

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