8月〜12月

8 12
「夏の庭より」 「初冬の庭で」


2004.12.12「初冬の庭で」

 久しぶりに庭仕事ができる時間が取れた日曜日。あいにく朝から雨模様、少しの晴れ間を頼みに作業を進めた。
 秋に撒いたデルフィニュームやラークスパー、バーバスカムは、定植できる大きさに育っている。まだ気温がある今のうちに植え付けてやった方がいい。大切なデルフィニュームは鉢植えに、ラークスパーは、バラに合わせて配置できるように青いタマクルマバソウや白の小花アレナリアモンタナと寄せ植えにした。バーバスカムは、30株ほどを庭のあちこちに植えておく。そのうちどれかはきっと環境が合って、バラと一緒に咲いてくれるだろう。種から育て、たくさん出来た苗はそんなふうに偶然性をねらって植えつけておくのが私流の植え方。小さなスコップで庭のあちこちを掘っていると、土がいかにもほくほくとしていい感じだ。
 頼んでおいたバラ苗が届いたと、園芸店から連絡がある。憧れの品種が入ったそのリストを眺めながら、コタツの中でひといき脳内ガーデニングのひととき。

 ちょうど1ヶ月ほど前、ビズ編集部のKさんからお電話をいただいた。私たちが実践しているバラのオーガニック栽培について取材をしたいとのこと。実際にお会いして、あれこれやり取りするうちに、私たちの土づくりの技術をビズで紹介してくださるということになった。
 原稿は、”心残りなことが無いように”ということで、私が書くことに。でも、今の土づくりのやり方にたどり着けたのは、私ひとりでの力ではない、ネットでの交流が基になっている。そこで、米ぬか仲間のkajinyさんや、りきさん、Toto&Bebeさんの協力を得て書き進めていった。
 ビズ編集部のKさんは、「バラの園を夢見て2」も手がけれらた才媛。粘り強く私たちの考え方を聞き取って、真摯に理解し、地味な土の話を楽しくわかりやすく読者に提示するために、すばらしい手腕を発揮してくださった。何度も何度もKさんと電話で打ち合わせをし、米ぬか仲間たちとメールでやり取りをするうちに、原稿はだんだん形になっていく。まとめていく過程で、私たちの土づくりに対する考え方がより明確になっていった。
 要は、保護液を撒かなくても、オーガニックローズは育てられるということ。そのためには、有機物マルチと米ジョー作戦によって生きた土を作ること。そうすることによって、バラが丈夫に育ち病気にも負けなくなるし、様々な益虫や野鳥たちが庭を訪れてバラを守ってくれるようになる…。
 今回は、土づくりがメインの記事となるが、写真には、益虫たちも少しは登場する。Toto&Bebeさん撮影の花びらの奥に潜むテントウムシの幼虫の写真を採用していただけたのは、とりわけうれしいことだった。
 発売は、来年1月15日。私たちの実践が、オーガニックでバラを育てたいと考えている方々の一助となればうれしい。また、米ぬかのバラ栽培への応用は、まだ始まったばかりだ。試行錯誤の楽しさをより多くの方々と分かち合っていけたらと思う。かなりどきどきしながら、1月を迎えることになりそうだ。



2004.8.22「夏の庭より」

 とてつもなく暑い夏だった。
 草も樹もそして人間もただ毎日を過ごすのがやっとと思うくらい、体温近い高温の日々が続く。お米の不作が心配された去年の夏とは大違いだ。薔薇たちも、成木になったものや鉢薔薇はなんとか葉を保っているが、冬に植えつけたばかりの株は軒並み棒のような状態になってしまった。まだ小さくて弱い薔薇たちは、高温時はそうやって葉を落として休眠し、身を守ろうとしているのかもと思ったりもする。
 
 夏になって気温があがると土の中の微生物がさらに活発に働き出す。夏場は、高温で元気になる納豆菌の仲間の枯草菌というのが働いて、ねばねばした物質を出し土を固め団粒化してくれるらしい。その菌のえさとなりパワーアップしてくれるのが米ぬかだ。とくに暑い日が続くと、目に見えて花壇表層の有機物が減っていくのがわかる。花柄摘みをしたあと土に撒いておいた薔薇の枝葉はあっというまにかさかさになり、そして、土の中へと消えていく。冬に厚く撒いたわら堆肥もかさがぐっと減り、ところどころ土が露出し始める。暑い暑い夏はつらいものだけど、土の中の微生物にとっては夏は暑くなくては困る。
 
 立秋を過ぎてから、ほんの少しだけど、過ごしやすい日が出てきた。お盆過ぎからは、風も雲も秋を感じさせるようになった。夜は虫の声が美しい。今日も、午前中は涼しい風が通り、久々に庭仕事をしようという気持ちになる。
 先週蒔いたビオラたち。涼しい玄関で発芽を待っていた平鉢で次々と芽吹いている。毎年のことながら発芽はうれいしいものだ。少しづつ外の気温に慣らす為にまず玄関先の木陰に移しておく。
  そろそろ高温期の休眠から目覚めてくれるだろう薔薇たちには、ごく薄い液肥を撒き始めた。スプレイヤーとか言われる道具を先日園芸店で入手。ホースの先に取り付けるだけで、液肥を500倍に希釈して撒くことができる優れものだ。以前から欲しかったのだが、比較的廉価でホームセンターでも販売されるようになったのがうれしい。また同じ道具で、2〜3日おきに木酢液も地面に撒いている。そのようにして木酢液を撒くようになってから、不思議なことに蚊がとても少なくなった。以前は庭に人が出るのを待ち構えていたように何匹もたかってきたのに。木酢の臭いが庭に残っているからだろうか。とてもうれしい。
 
 もう少ししたら、今度は、庭一面にたっぷりと米ぬかを撒くつもりだ。秋になって涼しくなれば、枯草菌に変わって今度は乳酸菌が元気になる。乳酸菌は、庭の掃除屋、消毒屋だそうだ。そして、米ぬかが大好き。秋薔薇のために、ここは一役かってもらおうと思う。また、その米ぬかを撒いたあとに、酵母を撒いてみようかとも思っている。パン作りのための天然酵母が手元にある。酵母菌は、合成屋。今まで1年をかけて微生物たちが分解してきた有機物を再合成して有益なアミノ酸やビタミンを生み出してくれるのだそう。それによって、土は一気に肥えるのだ。酵母菌は、葡萄の実などにたくさんついているそうだが、まったく自然とはうまくできているものだと改めて思う。

 この暑い夏の間に、”現代農業”の編集者からメールをいただいた。私のHPを編集の方みんなでとても楽しんで見てくださったのこと。そして思いがけず土ごと発酵についての原稿を依頼された。私の小さな実践に目を向けてくださったのはとてもうれしい。でも、原稿にまとめるのは予想以上に難しい作業。何度も訂正し、四苦八苦しながらまとめてみた。冬の菌糸の様子と、夏に団粒化した土の写真、庭の写真、米ジョー作戦を図式化して説明したものも添付。9月の始めに発行されるのだそうだが。

 また、夏に京都に帰省したおり、以前からお会いしたいと思っていたウェブ友達とも会うことができた。思っていたイメージどおりのとても素的な方々、土作りのこと、薔薇のこと、米ぬかのことと話が弾んであっという間に楽しい時間は過ぎる。オーガニックな薔薇づくりの輪がこんなふうに広がっていっていることがとてもうれしかった。

 薔薇を育てるうちに思いがけなく目の前に広がってきた微生物の世界。”微生物とうまくつきあう”ってことは人間にとってとても大事で楽しいことなのだということをたくさんの方々と分かち合っていけたらと思う。

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