9月〜10月

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「脳内ガーデニング」 「米ぬかその後」


「米ぬかその後」 2003.10.31
 
 ようやくやってきた秋は、それほど意地悪ではなかった。あの夏を思うと信じられないほど美しい季節になってくれた。日照も回復し、雨もほどほど、こうなると薔薇たちは正直なもの。ぽつりぽつりと蕾をつけ始める。
 米ぬかを撒くようになってからというもの、薔薇の葉がすっかり落ちて棒のようになってしまうということは、とても少なくなった。以前は夏から秋にかけて薔薇の葉がことごとく落ちてしまう可能性を考えて、意識的に常緑の低木をボーダーに入れていた。でも、今ではそんな心配も無くなり、薔薇でボーダーをうめてしまうということも夢ではなくなってきた。
 
 まだ暑さが残っているころから繰り返してきた脳内ガーデニング。このとりとめの無い作業の答えを見つけるかのように、週末ごとに庭を掘り返す。
 ボーダーで大きくなってしまったドイツトウヒ、まずこれを鉢に植えなおす。クリスマスには、美しく飾ろう。下の子がきっと喜ぶ。大きく開いたスペースに、壁際から、マダムジュールグラブロー、ムーンライト、マダムプランティエ、そしてセリーヌフォーレスティエ、アプリコットネクターを植えた。濃いアプリコットから白までの淡いグラデーションの一角になるだろう。
 庭の入り口で大きく枝を茂らせていた斑入りのエルダーベリー。思い切って掘り起こし、庭の一番奥の角に植え替える。開いたスペースには、壁に向かって、マダムアルフレッドキャリエール、ピエールドロンサール、ソンブロイユの3本を植えた。早咲きのキャリエールから、比較的遅くまで咲いてくれるピエールまで、長い間、壁薔薇が楽しめるように。
 出窓下からアーチまでのボーダーには、フロリバンダを中心に、たくさんの新しい薔薇苗を植え込んだ。ミスティパープル、イングリッシュミス、イレーヌオブデンマーク、コンテスドシャンボール、エレンウィルモット。淡いピンクから白のグラデーションを期待して。
 もっとも日当たりの良い玄関塀沿いには、テッポウムシで枯れてしまったキングのかわりに、大好きなグロワールドディジョンを植えた。南側の白樺下のボーダーには、スノーグースに添えて、ラベンダーラッシーとぺネロープを植えた。軽やかな雰囲気が庭に広がるといいのだけれど。
 
 大きく模様替えした薔薇の庭。以前よりさらに薔薇密度は高まったけれど、土が見えている部分はかえって多くなった。薔薇と混植するのは、春の小さな球根類、そしてクリスマスローズと、セダムなどの美しい小さな葉物。薔薇の株もとはできるだけ風通し良く。今年とても多かったテッポウムシの被害を未然に食い止めるための小さな抵抗だ。
 以前にも増して薔薇中心の庭に模様替えしたわけだけれども、さほど大変ということも無く維持できるような気がしている。保護液にも今年はあまり頼らずに薔薇の葉を保つことができた。

 ポイントはやはり米ぬか散布。米ぬかは、堆肥ととても相性がいい。
 近くの薔薇ナーサリーさんでは、今年の春から、米ぬかを苗づくりに使ってみたそうだ。少量の米ぬかを堆肥に混ぜてしばらくおいておくと、真っ白な菌糸が張ってくるとか。それを大苗づくりに使ってみたら、とても苗の生育がよかったとのこと。たった半年で、人の背丈をゆうに越えた薔薇苗たちがぎっしりひしめくそのナーサリーさんのフレーム。しなやかに伸びたディジョンの苗もそこから選んだ。
 
 苗の植付けがあらかた終わった私の庭。今度は冬の元肥の計画だ。今年は、まず薔薇用のボカシ肥と生ごみ堆肥を撒いた上に、わらの堆肥と米ぬか、カニガラなどを混ぜて撒いてみよう。良い菌が土の表層でパワーアップしてくれるような手入れを心がけていこうと思う。
 
 米ぬかは、薔薇に有用…確信に近いものが持てたような気がするこの1年である。



「脳内ガーデニング」 2003.9.9

 寒い夏が終わり、暑い秋が始まったという感じの9月。
 今年の夏、東京は記録的な冷夏。日照不足も重なって、庭の薔薇たちはかろうじて葉を保っているという状態だった。地植えの薔薇は特に調子が悪い。鉢植えのものは、少しでも日があたる場所に移動できるので生育はさほど悪くはなかったが、花は、とんと咲かなかった。
 しかし、薔薇とはまったく正直なもので、9月になってからの強い日差しを受けてどんどん葉を展開し始めた。ここぞとばかりに薄い液肥を頻繁に撒いて応援だ。蕾が次々と上がり始め、朝摘んできた薔薇で小さな花瓶を飾ることができる。
 
 少し涼しく感じられる午後、芽だしをしたパンジー・ビオラの植え広げも終わり、木陰で緑がちの庭を眺めながらの脳内ガーデニング。薔薇を新しく植えられそうな場所を捜す。
 南側のフェンスには、小輪房咲きのスノーグースが大きく茂っている。これに大輪の淡いつる薔薇を合わせたい。妹の庭でも絶え間なく咲くという、ウィリアムモリスがいいかなと思う。コンテドシャンボールもそえてみたらどうだろう。
 西壁の薔薇、こちらは、今年ことごとくテッポウムシの被害を受けた。大きく育っていたマダムアルフレッドキャリエール、今年の春に美しいコンビネーションを見せてくれたマダムイザ−クペレールとオドラータは、来春の開花をほとんど望めないくらいに弱ってしまっている。とても残念だけれども、また一から出直し。しかし、大きくスペースがあいた壁にどんな薔薇を組み合わせようかと考えるのは、それはそれで楽しい。
 西壁の候補としては、まず、キャリエールの新しい苗。近くのナーサリーで、春に手に入れておいたものが、よく小枝を伸ばして育ってきている。この薔薇は、やはりはずせない。それから、ムーンライト。とても上品な白の中輪花、四季咲きだ。そして、掲示板がご縁で頂いたピエールドロンサール。鉢植えで大切に育てているのだけれど、小枝がぐんぐん伸びて勢いが出てきた。淡いオレンジ色のティーローズマダムジュールグラブローも、鉢で育てている苗の生育がすこぶるいい。返り咲きの蕾もついていて。
 ほかにも、ラベンダーラッシ−やバフビューティーの苗が、鉢で大きく育っている。これらもどこかに入れられるといいのだけれど。
 西壁で唯一元気なのは、エメヴィベール。”無造作”という言葉がぴったりなくらい奔放にとてつもなく長い花枝を伸ばしている。花つきもいたって気ままなものだ。思い切って切り戻してシュラブとして育てようかとも思うけれど、夏の終わりについた愛らしい花が宙でうつむいて咲いているのを見ると、心が揺れる。
 アーチの足元、今まで宿根草を植えていたスペースには、思い切って薔薇を何本か入れよう。西壁の下のボーダーにも、手前に小さ目に仕立てて薔薇を植えようと思う。アプリコットネクターや、レイチェル ボウズ ライアンの苗が鉢にある。アプリコットを基調とするのもいいかもしれない。ほかにも秋に届く苗が数本。組み合わせを考えなければ。
 アーチのもう一方の側、バタースコッチのとなりには、マダムプランティエを添えてみよう。白くたおやかなオールドローズ、フェンスに這わせるとたわわに花を付けると言う。こちらも、鉢で苗がよく育っている。
 樹が大きくなるにつれて、日陰も大きくなってしまった。どうしても生育の悪い薔薇は、鉢にあげて日当たりのよい場所で育てよう。木陰には、木陰に似合った植物を植えなければ。
 薔薇の足元には、鉢で育ててきたクリスマスローズたちを植え込んでいこう。薔薇のボーダーの最も手前は、小さなセダムのいろいろを植えて縁取りとしよう。冬から春の彩りとして役割を果たしてくれるだろう。
 薔薇の間に植えている低木も、必要の無いものは鉢にあげスペースを広げ、また新たに美しい品種を植え込んでいこうと思う。鉢で育てているディアブロという銅葉の樹がとても魅力的にうつる。
 
 頭の中では、次々と来春に向かっての計画が出来上がっていく。積んではくずし、果ての無い計画ではあるけれども。

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