オーガニックローズによせて


このように、ここに記すのは少しためらいもありましたが、
思い切って書いてみました。
まずは、ご一読ください。
そして、もし、そんなこと…??と思われたら
どうぞ読み流してください。

こんなバラの庭の在り方もあるということを知っていただきたくて。
私流のオーガニックローズ観をお話します。


バラの庭はビオトープ

農薬を一切使わずにバラを育て始めると、
驚くほどいろんな虫や生き物たちが集まってきます。
それは、まるで”ビオトープ”のように!



”ノイバラと虫たち”(福音館書店)という本をご存知でしょうか。
藤丸篤夫さんという方が、家の近くの空き地にあるノイバラと
そこに集まる虫たちの生態を
写真と文でわかりやすく説明した子ども向けの本なのですが。
このホームページを立ち上げた初期のころ、
バラに集まる虫のことで掲示板が毎日大賑わいだったのですが、
そのころ掲示板にきてくださった方から教えていただいて、私はこの本と出会いました。

誰が世話すると言うことも無いのに毎年春に花を咲かせるノイバラは、
誰も薬を撒かずに世話も焼かないものだから、ただ訪れる生き物たちの住処となって
おびただしい種類と数の虫たちを春から秋まで養っているのです。

写真と文で語られるその生き物たちのドラマのおもしろいこと!
でも、同じことが自分のバラの庭で起こったとしたら、それはどうでしょうか。
ただおもしろいと言って眺めていられますか?

オーガニックでバラを育てる第一歩で、
まず、そういう問題にぶち当たるというのは言わずと明白なことですね。

まずは、観察者たれ

いくらオーガニックでバラを育てると言っても、
もちろん全く自然任せでは栽培とは言えないでしょう。
では、どうするか?

庭に来る虫たちを薬で一掃するようなことをせず、
じっと時間をかけて観察していると、
虫たちには必ず天敵がいるということに気付きます。



最初の一年は、たいてい害虫の被害の方がぐっと大きいです。

ところが、2年、3年とオーガニック栽培を続けていくと
たいへん不思議な事に害虫と天敵のバランスが取れてきて
思ったよりラクに管理できるようになってくるのです。

春先からバラの生長とともに出現する虫たちの種類と数は、
季節とともに変化していくということにも気付くようになります。

数年すると、
自分の庭での生き物たちのカレンダーが
頭の中に自然と形作られていきます。

ときには、どういうわけだか害虫の方が優勢になってしまうこともあります。
例えば暑い夏のあとの9月、
芋虫狩りに頼もしかったコアシナガバチの巣が
台風の風で落ちてしまったときとか。
そんなときは、ニームオイルなどの保護液を撒いてちょっと助けてやる…。



オーガニックな庭造りでは、
庭の状態を常に観察し続けるということがとても大切なことのように思えます。
そしてそれは、もちろんとても楽しい作業ですけれども。

”完璧”に育てるということをどう考えるか

害虫がいるからこそ天敵も来る…
この考え方がオーガニックローズを育てるときの基本ではないでしょうか。

害虫を一掃してしまったら、
それらをえさとしている天敵たちも生きてはいけません。

天敵がいなくなってしまった庭では、
発生した害虫を
なんらかの薬を撒くこと以外では制御できなくなってしまいます。

化学農薬ではない保護液と言われているような薬にも、
天敵に影響があるものがあると聞いたことがあります。
ただ、それらの薬は、
化学農薬ほどしっかりと効くということは、経験上無いように思います。
害虫も益虫も生き残る余地があるというところが
よいところなのです。

様々な保護液は、崩れかけた生態系のバランスを
なんとかバラを守る方向に立て直すには有効でしょう。
ただ、庭の状態を無視して多用するのは考えものかもしれません。
どんな薬でも薬は薬、
なんらかの影響があると思っておくのが慎重な考え方ではないでしょうか。



オーガニックと完璧さとは相容れないことだと思います。
オーガニックで育てるということは、自然のバランスを保てるようにするということで、
害虫のみを完璧に排除するということではないと考えています。

お手本は日本の里山

今ではとても少なくなってしまった
”里山”と呼ばれるような
自然と農業、人の暮らしが一体となったような地域。



そこでは、今のように生産性は高くはないけれども
自然を活かした自然とともにある暮らしが長い間続いていました。
炭焼きや農業利用などを通して常に人の手の入る雑木林では、
放置されたままの山林とは違った
たいへん豊かな植生や生き物たちの生態系が作られていて。
その山の幸を、わき水や落ち葉の堆肥といった形で受け取る田んぼも
またいわゆるビオトープ。
たくさんの生き物たちの住処でした。
人はそんな中で、自然から学び自然を活かし、
自らも農作業などを通して自然の営みに参加しながら
暮らしてきたのです。
物質的にはけして豊かとは言えないかもしれませんが、
とても美しい暮らし方だったのではないかと私には思えます。

庭でのオーガニック栽培を振り返った時に、
この里山の暮らしをそこに求めることはできないでしょうか。

自然を観察し、それを活かしながら
庭仕事を通して自然の営みに参加する。
そのことで、バラが健康に育ち、
バラに集まってくる生き物たちをも養う。
ただしそれはさすがに
生き物たちが結果としてバラを守ってくれるようになる方向付けを
柔らかな方法で人がしてやった上のことですけれど…。

基本の土作りとマルチング 

バラづくりのどんな本を読んでも
マルチングがとても有効だということが書かれています。
バラづくりをする上ではあたりまえすぎるくらいのことなのですが、
オーガニックなバラ栽培を追及してきて
結局やはりここに行きついたことに改めて驚いています。

ただし、私たちがめざしたいのは、
微生物や小動物たちで豊かに満たされた
スーパーマルチというべきもの。



天敵・害虫といった生態系を整えると同時に、
土の中の生態系も豊かなものしていくことで
結果としてバラが丈夫に育ち、病気にも強くなってくれるのではないでしょうか。

土の中の微生物たちは、バラに必要な養分を作り出してくれます。
微生物が元気だと、肥料も最小限でよくなるはずです。
また有用な微生物たちは、菌を空中に飛ばし、
葉に病気と拮抗する善玉菌を棲みつかせてくれる、
そんなことも期待できそうなのです。

”現代農業”でこのところ繰り返し報告されている実践の多くは、
この土作りの技術についてです。

それを庭でのバラづくりに応用して、
様々な試みがなされてきました。
ネット上で知り合った米ぬか仲間によって!

微生物が好む未熟な有機物でバラの花壇をマルチする。
そして、米ぬかや近くで採取してきた善玉菌、
有用な微生物を含んでいると思われる資材や肥料、
土の中の微生物を元気にしてくれる効果がありそうな木酢液…
などなどを
それぞれの工夫で撒いていく。

そうすることで、土が団粒化する。
次第に肥沃になっていく。
有機物や米ぬかによるマルチが、労せずして土を作ってくれるというわけです。

保護液もあまり撒かなくていい、
お金もあまりかからない…
だって必要なのは米ぬかと身の回りの有機物ですから。



ただし、やっぱり”完璧に”とはいきません。
でも、庭で個人がバラの花を愉しむというレベルでしたら、
十分満足のいく結果を得られるというのは、たぶん本当だと思います。

オーガニックローズがくれるもの

本気でオーガニックでバラを育てようとしたら、
多分、とくに自然について、見方・考え方が変わります。
おおらかに、長い時間を待てるようになるようにも思います。
完璧でないことの美しさにも気付けるような気もします。
そうそう、観察力が増すことは間違いないと思います。
真に美しいもの豊かなものにふれて、ストレスが少しは軽くなります。
あと、同じ楽しさを語り合える友ができます。



もちろんこれは、おそらくオーガニックにここまでこだわらなくても、
実現可能なことだと思います。

でも、私はなぜか、こだわってきました。
あきれるほど、頑固に。^^;
それは多分、それがとても楽しい試行錯誤だったから・・・きっとそうなのでしょうね。

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