12月の作業

庭の様子

バラの庭にとって、1年のスタートとも言えるのがこの12月です。
秋に美しく咲いたバラたちもそろそろ成長を止め
休眠に入ります。
咲き残った花が、日々強まる冷え込みの中、
美しさを長く枝先に留めて。
1年のうち一番静かで、
その反面忙しく、
エキサイティングな時期でもあります。
こたつでの脳内ガーデニングにも余念がありません。

生き物たちの様子

庭で活躍してくれたカマキリの卵塊を見つけるのがこのころ。
カマキリは、大切な庭の用心棒です。
一度庭に居つくと、
晩秋に卵を産み、
小さな庭の中で毎年命をつないでいきます。



シジュウカラや野鳥たちも、
よく庭に訪れるようになります。
ピーナツや、ひまわりの種、
ミカンを半分に切ったものなどを
庭に置いて餌付けするのも楽しいものです。

今月の作業

春を夢見て、1年で一番忙しいのがこの月です。

晩秋から冬にかけては気温が低くなるため、雑菌が繁殖しにくくなり、
発酵肥料作りを始めるには最適です。
同じ発酵を利用した、
寒作りのお酒や、漬物がおいしいのも理由があります。
小バエや、コウカアブなどの蛆虫もさすがにこの時期は心配ありません。

発酵肥料とは、あらかじめ有効菌で有機肥料を発酵させたものです。
発酵済みなので、有機肥料でも即効性があります。
よくできた発酵肥料は、アミノ酸や有効菌の塊のような状態になっているので、
少量でもよく効き、
土をよくし、植物を健康に育てます。
発酵による熱やガスの心配が無いので、
鉢植えのバラにも安心して施すことができます。

オーガニックなバラづくりでは、
バラを健康に育てるとともに、
庭を有効菌でいっぱいにすることが大切です。

ですから、よくできた発酵肥料は、
オーガニックローズの強い味方になってくれるはずです。

発酵肥料作りのポイントは、まず、
よい種菌を見つけてくることです。

できれば、近くの雑木林などから、”はんぺん”と言われる土着菌のコロニーを採取してきて、
発酵米ぬかを作ってみましょう。
活きのよい地元の土着菌を使うのが一番失敗しにくいのです。

土着菌のコロニーを見つけるには、
地域の雑木林または竹林、大きな公園の
落ち葉が何年も自然に厚く降り積もっているような場所を探してみてください。
落ち葉の層と、その下の団粒化した土の層との間に、
白い菌糸の塊(はんぺん)、もしくは白い菌糸が回った腐葉土を見つけることができると思います。
「米ぬかオーガニック12ヶ月」の11月のページも参照してください。

発酵米ぬかを作るには、
まず、生の米ぬかと採取した土着菌をよく混ぜ合わせます。
米ぬかは、土着菌の腐葉土の2倍くらいを目安にしています。
次に水を少しずつ加え、握ってもほろりと崩れる位の水分量となるよう調整します。
この水分調整が成否の鍵となります。
何度か経験すると、これくらいかなというのがわかってきます。
よい発酵のためには、通気性が大切なので、
テラコッタ鉢に入れ、雨が入らないようにふたをします。
1〜2日すると、ほかほかと発熱し始めますので、
毎日1度は、底からシャベルでかき混ぜながら発酵を進めます。
量にもよりますが、
約2週間で発熱がおさまり、全体に白っぽくさらさらな状態になります。

どうしても、土着菌が手に入らない場合は、
市販のコフナやバイオポストなどの資材を使って
同じように発酵米ぬかを作ることもできます。
よく土作りをした団粒化した庭土があれば、
ぜひ、発酵米ぬか作りに使いましょう。
自分の庭の有効菌を入れると
作った肥料のなじみがよいようです。

菌の種類は多様な方が失敗が少ないので、
私は、この3種類の発酵米ぬかを合わせて発酵肥料作りに使っています。

発酵米ぬか作りがうまくいったら、いよいよ発酵肥料づくりに進みます。
発酵米ぬかを元種に、油粕や骨粉、草木灰などの有機肥料を発酵させるのです。

まず、発酵させる有機肥料を用意します。
油粕、骨粉、バッドグアノ、草木灰、魚粉、ニーム粕、くんたん、米ぬかなどが
主な材料です。
発酵の最終段階で、これに化成肥料を加えます。
化成肥料も、発酵により、有機肥料に生まれ変わるそうです。
慣れてきたら、10月から11月のうちに発酵米ぬかを仕込み、
あらかじめ発酵肥料の配合を計算し、資材を用意しておくとよいでしょう。
「米ぬかオーガニック12ヶ月」の10月のページを参照してください。

まず、用意した有機肥料と発酵米ぬかをよく混ぜ合わせます。
次に、水を少しずつ加え、握ったらほろりと崩れるくらいに水分量を調整します。
テラコッタ鉢やに入れて、ふたをし、雨が入らないようにします。
テラコッタ鉢の替わりに、丈夫なダンボールに入れてもよく発酵します。
ダンボールを使う場合は、底が抜けないような工夫と、
雨が避けれるようにしてください。
やはり1〜2日で温度が上がってきますので、
1日一度はシャベルで下からよくかき混ぜてやりますと、
1週間〜2週間で、さらさらに白っぽく変化してきます。
そうなると、温度もあまり上がらなくなります。
このような状態になったら、
今度は、化成肥料を投入します。
化成肥料は肥料を酸性にし、
アミノ酸を作り出す酵母菌が働く環境を整えるとともに、
酵母菌の餌となります。
化成肥料は1度に入れる量は全体の10パーセントを超えないようにしてください。
投入時に、発酵肥料がすっかり乾ききっているようでしたら、
化成肥料を水で湿らせて投入すると
ちょうどよい位の水分量になります。
化成肥料を投入したら、酵母菌を守るため温度が高くなりすぎないよう、
気をつけてちょくちょくかき混ぜることを続けます。
さらに1〜2週間すると、化成肥料に真っ白に酵母がまわり、
温度もすっかり下がります。
肥料全体も灰白色に変化し、さらさらに乾燥したら出来上がり。
麻袋や紙袋などの通気性のよい袋に入れて、
雨や直射日光が当たらない、通気のよい場所に置いて保管します。
寝かせておくと、肥料の匂いが、おいしい鰹節のような匂いに変化していきます。
アミノ酸の匂いかもしれません。

12月には、ぼうぼうに伸びたつるバラの整枝・誘引を行い、すっきりと新年を迎えたいものです。
整枝で出た大量の枝葉は、小さく切って庭に撒き、
さらに少量の米ぬかを撒いて堆肥でマルチして「土ごと発酵」させます。

「土ごと発酵」とは、庭の表層に撒いた米ぬかや未熟な有機物を餌に
土着菌(有効菌)が元気になり、
耕さなくても土が団粒化し、肥沃化していくという農業技術です。

「土ごと発酵」を促すには、季節の変わり目ごとに、庭土の表層にうっすらと米ぬかを撒くとともに、
特に冬場のこの時期に、有機物マルチを施します。
バラの庭では、剪定で出た枝葉を細かく切って有機物マルチに使うのです。

自然の野山に降り積もり、木々を育てる落ち葉のように、
庭に撒かれたバラの枝葉は、
一年かけて、土の上で土着菌や虫たちによって自然に分解され、土に返っていきます。
この分解に伴う作用で、耕さなくても40センチ位の深さにまで
土はふかふかに団粒化します。

土を肥沃にしてくれる土着菌は、まず、未熟な有機物に取り付きます。
土着菌を呼び寄せるためにも、有機物マルチは大切なのです。

このとき、実は、病気の葉や枝もかまわず撒いてしまっています。
農薬で消毒はいっさいしませんので、きっと庭のいたるところに病菌は、いるでしょう。
ですから、多少、病気の枝葉を取り去ったところでそれほど大きな差はないはずです。

また、自然界において、病菌の一人勝ちはありえないと思えば、
病菌に対抗する菌が自然に集まってくるという可能性もあるかもしれません。
実は、そんなことも期待したりしています。

事実、この土ごと発酵を始めてから、
黒点病やうどん粉がかえってひどくなったということはありません。

それどころか、うどん粉病に関しては、
まったく何も撒かなくても
1〜2年目の株以外は、ほとんど発生を見ないのですから、まったく不思議なものです。

ただ、この土ごと発酵や米ぬか撒きを
鉢植えバラに応用しようと考えるのは、
よほど有機物を使い慣れた方でなければ、避けた方が無難です。
鉢土は限られた空間です。
未熟な有機物は、分解の過程で熱やガスを出し、
バラの根にダメージを与えてしまう可能性が高いのです。
そんなリスクをしょいながら土作りをしなくても、
鉢は、最初から最良の配合で土を用意できます。
庭土と鉢植えは全く別物と考えてください。

でも、発酵肥料に関しては、
あらかじめよく発酵させてあるものですから、
鉢バラにも安心して使うことができます。
よくできた発酵肥料を使えば、
鉢バラでも、安心して微生物の力を導入することができることでしょう。


(ヨーラン デ ダラゴン)
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